構造計算しなくていいの?
「もうそろそろ、上棟風景から見えてくるネタは飽きられるかなぁ…」
と思いつつも、本日も富士市の新築注文住宅の現場から、もっとマニアックなネタを。
大工たちが作業をしているのは、二階の天井。
水平構面と言って、この上に屋根ができます。
3階があるわけではないけれど、3階の床と同じ強度で二階の天井を固めています。
「水平構面」と言って、これがあって初めて、壁の耐力壁が効果を発揮します。
ガムテープで蓋をしたダンボールを思い浮かべれば分かりやすいですね。
構造計算をしないと、こういった、床とか屋根とかの強度の検討って、一切出てこない…。
怖いですねぇ…。
ほかにも、構造計算をしないとわからないことをちょっとご紹介します。
大事だから嫌がらずについてきてくださいねー。
上の写真に色を付けてみました。
一番上の梁、左(赤)と右(緑)で、太さが全然違います。
梁を2点間で支えるとして、その支える距離が遠くなるほど、梁はたわみますから、大きくなるのは分かりますよね?
大きな川に渡す橋は、より丈夫で大きくしなければならないのと同じ。
でも、柱を黄色くしましたが、規則正しく1mおきに入っているので、赤と緑の2つの梁の大きさが違うのはおかしい…。
実は壁の条件が違うんです。
Dには窓(青)が入るので、D以外が地震に耐える丈夫な「耐力壁」になります。
そしてその下の階では、A~Dの下は耐力壁で、EFの下はドアが来るので耐力壁ではない。
この耐力壁の配置により、地震の際に梁をへし折ろうとする力が、赤い方と緑の方で違うんです。
だから、太さが違う。
これは、構造計算をしないとわからない部分です。
なんてことを、ちょうど別のお宅の構造計算をしている休憩中に書いています。
これが構造計算ソフトのごく一部。
指で囲む部分は二階があり、左側は広く一階(下屋)になっています。
指差す部分は通し柱。
で、計算すると、まるで拡大した柱の、
・上の柱は左側と下側の梁との接合部が、
・下の柱は右の梁との接合部が、
それぞれ、通常の羽子板ボルトでの固定だと、強度不足でエラーになるので、テックワンP3という特殊な金物での固定に変更してエラーを解消しています。
下の写真で、社員大工の丸山が叩き込んでいる部分が、そのテックワンP3。
通常の羽子板ボルト留めの固定する力(引張耐力と言います)は、7.5kN。
この大きなテックワンP3は、40.3kN。
よくわからないかもですが、5倍も強い強度の接合になるわけで、こういうのを、一箇所ごと、全ての接合部で検討するのが、構造計算なんです。
木造住宅は構造計算をしなくていいわけではなく、
構造計算の提出義務がない、
というだけなのです。
こういうのを検討しないで家を建てる時代は、もうとっくの昔に終わっているはずです…がぁ…。
2021年03月04日
Post by 株式会社 macs
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生存確率50%の超未熟児だった娘が退院して家族がそろった夜に涙してから 家は家族の絆を育む場所だと気付く。地元で百年。これからも社員大工たちと共に創りあげ 家族の笑顔と絆を一生涯守ってゆくのが私の使命。