四国村で考えたこと
本日から七十二候は、大寒の末候で【鶏始乳:にわとりはじめてとやにつく】。
「とや」とは、【鳥屋】で、鳥小屋のこと。
で、今回は鳥の家ではなく、ヒトの家について。
出張の空き時間に、香川県の四国村に行ってきました。
四国村とは、緑豊かな広大な敷地に、四国各地から江戸~大正期にかけての古い民家が移築復原された野外博物館で、当時の日本人の生活の様子をうかがうことが出来ます。
こちらは県指定有形文化財の旧山下家住宅内部。
江戸時代の山村農家の家。
家の半分(右側)を占めるのは、作業ができる土間。
土間には、かまどがあって、その前が小さな板の間、あとは6畳間と3畳間。
トイレとお風呂は別の小屋。
板戸一枚で外界と隔てられているだけで、勿論断熱材などない。
かまどの火が消えれば、冬は外と変わらない寒さになる。
ここに、親子兄弟の大家族が肩を寄せあって、日が出てから暗くなるまで農作業をしていたわけですね。
解説にもありましたが、夫婦生活も不自由なのは想像に難くない訳で、その分、家族の情愛は細やかで家族愛も強く、家族内での争いごとは最も恥とされたのだそうです。
こちらは、重要文化財の旧河野家住宅内部。
やはり大きな土間と、板の間と座敷。
左側に見えるのは、下の大きなかまどで湯を炊き、吊るした大きな桶内部に、和紙の原料の楮(こうぞ)を入れて蒸す装置だそうです。
「土佐和紙」という言葉はご存じの方も多いと思いますが、四国は昔から和紙の産地なのです。
この、一見、エキセントリックな建物。
ワォ、フジモン建築?という感じですが、これも、必要から生まれた造形美。
江戸時代、薩摩の黒糖、讃岐の白糖は特産品であり、砂糖〆(しめ)小屋と呼び、中央の石臼で原料のサトウキビを、牛が一日中ぐるぐる回って牽いていたのだそうです。
四国村は、屋島という岬の付け根にあり、四国村の最上部には、安藤忠雄の四国村ギャラリーがあります。
実は、もともと、世界のアンドーの、この美術館お目当てに立ち寄った四国村でしたが、四国村に点在する古民家の方に、ずっと深い感銘を受けました。
というのも、四国村を後にし、移動のための駅に向かう道すがらあるのは、
ガリバー、カメラのキタムラ、洋服の青山、ユニクロ、ガスト、GEO、トヨタ、日産、マクドナルド、パチンコ、イエローハット…
何これ?
何市?日本中おんなじ風景。地方色、ゼロ…。
確かに、日本人の生活は豊かになりました。
四国村にある古民家と、現代の住宅を比べれば、どんなローコスト住宅だって、今の住宅のほうが暖かくって快適。
昔の家になんか、いまさら戻れない。
けれど、子供は自分の部屋に閉じこもってYoutubeか携帯ゲーム、大人はTVを付けっぱでダラダラと…。
果たして、心の豊かさはそんなに向上しているの???
昔の人達より現代人の方が、そんなに幸せなの???
自給自足のサスティナブルな生活と、大量の資源とエネルギーを消費して、処分にも恐ろしくエネルギーがかかる物を無秩序に作り続けていいの???
深ぁ~く、考えさせられたのでした。
文:鈴木 克彦
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工務店のマクスから、家づくりの情報とは違った切り口で、「住まいと暮らしの視点」からローカルで旬な話題を発信してゆこうと思っておりますワン。
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