- 2011.11.09 水曜日
- 先日のブログで、富士宮市の布屋呉服店様の旧店舗の解体工事の鬼瓦のことを書かせていただきました。
とても立派な鬼だったので、解体してつぶしてしまうには忍びなく、自ら屋根に登り、分解して会社に持ち帰り、洗って組み立て、展示が出来る様に台も作らせていただきました。
その後この様に、布屋さんで旧店舗解体の感謝展示会が催されたのに合わせ、この瓦がこの様に展示されたのでした。
本来この鬼瓦は、屋根の上にあり、下から眺めても、家人でさえそのディテールを見ることは出来ません。
それが皮肉なことに解体を期に、間近で衆人の目にとまることとなったわけですが、この鬼を作った職人本人でさえ、そんなことは考えもせず、ただ自分のプライドにかけ、自分だけが納得出来る良い仕事をしたわけです。
私はその職人魂に感銘し、寄せ書きを書かせていただきました。
屋根の最も高い部分:棟、その両端に付ける瓦を鬼瓦と呼びます。
魔除けとして鬼の顔を型取った物が多いものの、そうでない物も
鬼瓦と呼びます。
下がり藤の家紋と、山市の屋号を備えた鬼瓦は、その後ろに影盛
(かげもり)と言う雲形の装飾が付き、さらに全体が台に乗って
います。
『台付影盛』と呼ぶ、非常に手の込んだ鬼瓦です。
棟も単純に熨斗瓦(のしがわら)を積むだけでなく、中間に丸い
文様が入った瓦が入っています。
この文様は、社寺の軒瓦などでよく見られる「京花(きょうばな)」
という意匠で、中心が三巴(みつどもえ)。
巴は渦を巻いているように見えるので水の象徴とされ、鬼瓦の雲や
波の意匠と同様、火事から家を守る、と言われます。
また、三つ巴の外側の小さな点は文殊と呼ばれます。
京花の意匠は、時代が古いほど、巴の尾が長く、文殊の数が多く
なり、巴と文殊の間の境界線(圏線)も明確になります。
使われている京花を見ると、巴尾が長く、文殊が16ヶと多く、圏線
も見られるので、古い時代の意匠の京花と言えそうです。
いずれにしても、下から高い屋根の上を眺めても、この様な手の
込んだ仕事はよく見えないことは確か。
しかし、そんな家人でさえも、見ることのない部分に拘って手を
掛けるのが職人の誇りであり、その誇りを評価できるのが“粋”
というものでしょう。
兎に角安ければ良い、という風潮の中、本当に良い物は時代を
超えます。
そんなことを感じさせる仕事だと思います。
株式会社マクス 代表取締役 鈴木克彦
昨日、そのお礼にと、布屋さんより展示会の際の写真を額入りで、そして、私が喜ぶツボに
“ド”ストライク、のプレゼントを戴いてしまいました。
それがこちら。
桐の箱には、古釘鑓(やり)とあります。
そう、和釘を研ぎ出して作った鑓です。
和釘とは、現在は一般に見かけることはほぼ無いでしょう。
文化財クラスの神社仏閣で、板を打ってある部分に和釘の頭を見ることが出来るくらいです。
(以前のブログ:犬山城)
ホームセンターなどで売っている、いわゆる普通の釘は、鉄鉱石をコークスを熱源として、溶かして作る鉄から作られます。
対して、和釘は、砂鉄を木炭を熱源として溶かさずに作ります。
いわゆる『たたら製鉄』です。
作ると言っても、鉄鉱石を溶かして作る製鉄はそのまま製品になるのに対し、たたら製鉄は、不純物のみを液体として溶かし出し、鉄は固体のまま炉に残った物で、このままでは製品ではなく、出来た物をさらに鍛えて製品にします。
たたら製鉄は、砂鉄を低温で還元するので、現在の製鉄とは違い、リンや硫黄分等の不純物が無く、非常にさびにくいと言う性質があります。
現在では、たたら製鉄は日本刀用にわずかに作られているだけだそうで、その意味では、たたら製鉄で作られた和鉄は、日本刀用には非常に価値があり、現在も、和釘を卸金と言う技法で鋼に作り替え、日本刀にするのだそうです。
(和釘自体は「ズク」という鋼に比べ炭素量が高く、堅いが脆い和鉄なので、そのままでは刀にならない)
と、今回色々調べて知りました。
う〜ん、
それにしても、
うっとりしますね。
実際に使われていた和釘が、こうして芸術品になり、手元にあるわけです。
布屋呉服店社長様並びに社員の皆様、本当にありがとうございました。
そうそう、ちなみに、
「むかしの大工さんは釘を使わないで建物を建てた」
「この家は、釘を一本も使わないで木組みで出来ている」
とか耳にすること有りますが、そんなの嘘っぱちですよ(笑)。
実際この様な和釘が使われてきているわけですし、文化財クラスの神社仏閣だって、杭の様な太い和釘で構造材を繋いだりしているのですから。
これは、現代の様に、釘打ち機でバンバンバン…、
ではなく、「本当に必要な部分にしか、貴重な釘が使われていない」と言うことだと思います。
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Comments
というか、包丁フェチとしては、刃物に心が動いたのでは?(笑)